液体クロマトグラフ入門

分離の原理

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HPLCで試料を適切に分離させるためには、カラムの選択からアプローチする場合と、分離モードの選択からアプローチする場合があります。これらの紹介と、分離モードの中では最もよく用いられる、分配-逆相系において分離を改善させるためのアプローチの方法、および試料に応じたカラム、分離モードの選択の仕方について紹介します。

カラム

分離カラムの固定相(充填剤)としては、シリカゲルなどの無機系充填剤とポリマービーズなどの樹脂系充填剤に大きくわけられます。

無機系充填剤

シリカゲルを基材とした充填剤が最も広く利用されています。その他にはアルミナ、ジルコニア、チタニアなどがあります。

シリカゲル充填剤は樹脂系充填剤よりも粒子を微小にすることが可能です。そのため高い分離能を示し、広範囲の移動相が使用できます。しかしシリカゲルは塩基性の水溶液に溶解するため、pHは8以下で使用することが推奨されています。

樹脂系充填剤

樹脂系充填剤として用いられているものとしては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレートなどの合成ポリマーゲルや天然高分子ゲルなどがあります。

合成ポリマーゲルでは合成条件により充填剤の硬さや、細孔の大きさなどを制御することができるため幅広い用途に使用されています。ポリマーゲルは幅広い pH範囲(pH2~13程度)で使用できます。シリカゲルよりも優れている点としては、大孔径充填剤が得られやすい点、生体高分子物質に対する活性が低い点などがあげられます。

モード

分離モードには分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどがあります。

分配クロマトグラフィー

移動相と固定相間における試料成分の溶解性の差により分離します。そのため移動相より固定相に溶けやすい成分ほど遅く溶出することになります。固定相の選択の幅はそれほど広くないため移動相の組成やpHを変化させて分離の多様化が可能となります。

分配クロマトグラフィーでは固定相と移動相の極性の相対的な関係から順相系と逆相系に分けられています。

順相系

移動相の極性が固定相の極性よりも低い関係にあるものを順相系と言います。そのため試料としては親水性の高い、低極性の化合物に適しています。

移動相は非水溶性有機溶媒または水、緩衝液と水溶性有機溶媒の混合溶液を使用します。固定相は、NH2、やCN(シリカゲル系、ポリマー系)、極性基で表面を修飾したものが用いられます。

逆相系

最も広く用いられている方法で、移動相の極性が固定相の極性よりも高い関係にあるものを逆相系と言います。試料としては、中~低極性のほとんどの有機化合物が対象となります。移動相は水、緩衝液と水溶性有機溶媒を混合溶液を使用します。溶出力は有機溶媒の割合が増すほど強くなります。固定相は、シリカゲル系、ポリマー系逆相充填材が代表的な充填剤です。

イオン交換クロマトグラフィー

固定相に様々なイオン交換体を用い、試料中のイオンと移動相中の溶離イオンとの間で可逆的なイオン交換を行います。試料イオンのイオン交換体への親和性の差や、移動相中の錯形成の差を利用し分離します。代表的な充填剤としてはスチレン-ジビニルベンゼン系の多孔性ポリマービーンズの表面にイオン交換基を導入したものが使われています。イオン性化合物(解離しやすいもの)に適用されます。

サイズ排除クロマトグラフィー

高分子物質の分離に優れていますが、複雑な多成分を含む試料の分離は困難です。固定相に多孔性粒子を用います。試料成分はその細孔内部への浸透性の差により分離します。細孔の大きさより大きい分子は細孔内部に浸透できず、速く溶出します。 逆に細孔よりも小さな分子は細孔内部まで浸透するため、大きな分子より遅れて溶出します。

分配-逆相系における分離の改善

HPLCでは最も広く用いられるこの系において、分離を改善させるために、固定相、移動相及び移動相のグラジエントをどう考慮していけば良いか、紹介します。

固定相

分配クロマトグラフィーの逆相系ではC8やC18といったカラムが多く使われています。C8やC18の充填剤はHPLCで使われる多くの移動相において、適した保持力を持ちます。固定相では、結合基の疎水性が増すと試料の保持力は高くなります。例えばC8カラムを使用し、溶出の早い成分の分離がさらに必要な場合にはC18カラムを使用します。

逆にC18カラムを使用し、溶出しにくい疎水性の高い試料がある場合は、C8カラムを使います。

このように目的成分の疎水性によりC8やC18のカラムを使い分け、最適な分離条件に改善します。

移動相

逆相系での移動相は、多くの有機溶媒と水の混在した状態や、酸性やアルカリ性の塩溶液との混合状態で使用されます。移動相の働きは分離する目的の試料成分を固定相との相互作用で溶出させることにあります。

そのため逆相系では、溶離液である有機溶媒の組成が多くなると、ピーク形状がシャープになります。

また試料中にイオン性試料が含まれる場合は、溶離液のpHを調整し、試料のイオン性によりピークの溶出順序を変えることが出来ます。つまりイオン性試料に対しては緩衝液の塩濃度を上げることにより、溶出をより容易に出来ます。

グラジェント

移動相に一定組成の用いる均一濃度溶離(Isocratic elution)では、固定相に対する保持力が異なる成分の分離の際に長時間要したり、ピークが拡がることがあります。このような場合には、移動相の組成を連続的に変化させる勾配溶離(Gradient  elution)用いられます。ピークが拡がってしまう時には、移動相の有機溶媒の組成比を上げ、溶離力を上げていくことにより試料の拡散によるピークの拡がりを抑えたピークを得る事が出来ます。

試料に応じたカラム、分離モードの選択

HPLCにおいてカラム、分離モードを選択する際のフローチャートです。

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